牡蠣の話


牡蠣が食べられなかった。

カキを食べるとほぼ百発百中で当たっていたので恐ろしくて食べられなかったのだ。

少なくとも高校、いや中学校以来になるだろうか口にしたことがない。

大学のとき友人の家で牡蠣鍋に誘われたことがあった。そういう事情だからと断ったのだが、カキは食べなくてもいいからまあ来るだけでもいいから来いと言われて鍋の現場に行った。

鍋のハクサイだけでも食べろと言うので渋々食べた。

当たった。寒気による震えが来て、熱が出て家まで車で送ってもらう羽目になった。

それ以来本当にだめなんだと思い、ずっと食べていない。

はじめの20年くらいはカキなんてわざわざ食べなくったっていいやと思っていた。

品川のオイスターレストランに行ってもクラムチャウダー止まり、鍋の会があればカキの入っていない鍋のチームをわざわざ作ってもらって避けてきた。

でも、みんながカキを頬張り美味しい美味しいというのを目にし、テレビのスイッチをひねればカキに舌鼓を打つ場面をよく見るにつけ、いつしか自分は損をしていると思いはじめるようになってきた。

カキが食べられるようになりたいと思いはじめた。

カキが食べたいに変わった。

昨晩、なじみのバーで勇気を振り絞って「牡蠣と九条ネギのペペロンチーノ」を注文した。

自分がカキがだめなことはバーのスタッフも常連たちもよく知っている。

なにせ久しぶりに食べるものだから味もろくに覚えておらず、当たるのが恐くて食べないだけなのか、
それに加えて根本的に味や食感がだめなのかもよくわからない。

昨日は弟子の娘も来ていたので注文してもやっぱり食べられそうになかったらよろしく頼むとお願いした。

出てきた。大盛りだ。

一口目、美味しい。そうそうこんな味と触感だった。火がよく通っていてパスタと絡んでいける!

これなら大丈夫、弟子と二人でパクパクと平らげた。

でもこれだけでは安心できない。2、30分で悲劇が襲ってくるかもしれない。全く気を抜けない状況だ。

アレから20時間以上経つが、なんともない。


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