3月の読書 八月の日曜日


パトリック・モディアノの『八月の日曜日』を読了。

2014年のノーベル文学賞を受賞した作家で贔屓の堀江敏幸さんが訳していたので読んでみた。

表紙のイラストは棕櫚並木が続くニースの海岸通りに主人公を思わせる男が独りたたずんでいる。

200ページと少しなので単行本でも持ち歩きに不便はなくちょうどいい厚みだ。

 

物語の中に皮革衣料の屋台店が出てくる。以前旅行でヨーロッパを巡ったときに南仏ではないがイタリアのフィレンツェだったかヴェネツィアだったかで同じような屋台に行った時のことを思い出した。

一緒に旅した友人の目的のひとつがイタリアで革ジャンを買うことだったので、皮革衣料の屋台が道の両側に何店も並ぶ通りへ友のお供で付いて行った。どの露店も黒や赤を中心に大量の革ジャンやパンツが吊るしてある。 友人は目を輝かせながらいろいろ物色し始めた。

たぶん自分は全く興味はなかったんだが友の後ろで物珍しそうに遠目で見ていたのだろう、目が合った売り子(と言ってもジローラモさんみたいなオッサン)が一着の革ジャンを抱えて、しきりに着てみろみたいなジェスチュアとイタリア語で勧めてきた。

こんなの着てみようもんならほとんど買わされたも同然だと、やたら警戒心を前面に押し出して「要らない、こんなの高くて買えるか!」とこちらもジェスチュア交じりに困ったときの日本語まくし立て作戦で応戦した。

着せるのは諦めたのか今度は別の一着を持って来て「着なくてもいいから触ってみろ」と言う。触るくらいなら大丈夫だろうと恐る恐る袖の部分を触ってみると、なんということでしょう!滅茶苦茶やわらかいぢやないか!

「おー、やわらかーい!」と多少イタリア人っぽく大げさに日本語で言うと

「そうだろう、そうだろう。俺の店で売ってるのはそんじょそこいらのとはモノが違うんだ。子牛の革だぜ、にーちゃん!」とでも言っている。友人によると子牛の革ってのは本当らしい。

聞きもしないのに値札を見せられた。詳しくは覚えていないが多分10万円くらいだったと思う。 革製品に全く興味がなかった自分には単純に「高い!」だけの感想だったが、革ジャン好きの友によるとこんな上物は日本で買えば軽くその倍はするだろうと言っていた。こいつもグルなんじゃないか?と思うくらい友人も革ジャンの安さと質の高さ、デザインに驚いていたからいい物には違いないんだろう。

結局友人はお気に入りが見つかり一着買ったのだが、自分が驚いたのは露店にもかかわらずクレジットカード決済ができたことだった。その頃の日本の露店ならなら完全に現金払いだと思っていたのでヨーロッパのクレジットカードの普及ってのはすごいんだなと感心したもんだ。

今を思えば自分も一着買っておけばよかったかな。

 

そんなことを思い出させた一冊だった。


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