3月29日の日記 ワルトシュタイン


3月29日 晴れ そろそろ外套を春向けにと思うがまだちょっと先延ばし

 昨晩就寝前にYoutubeを観ていたら街頭演奏ものがあった

 倫敦はキングズクロス駅のショッピングモールのアーケードらしきところで十歳そこそこの男の子がピアノ演奏している動画だった キングズクロス駅といえばホグワーツ特急の始発で有名な駅だ

 動画は通りに置かれた相当年季の入ったアップライトピアノ(どうも真ん中辺りの白鍵が一音壊れてしまっているヨーダ)の前に少年が腰掛けて弾き始めるところから始まる

 出だしを聴いてハッとした 知ってるピアノソナタの中で一番好きなベートーベンのピアノ・ソナタ 第21番 ハ長調 作品53≪ワルトシュタイン≫の 第1楽章:Allegro con brioだ もうそこから釘付け(コンコン)になってしまった

 弾き始めの場面少年とピアノの横ではパンク系の若者二人がそれまで演奏していたのだろうがストリートプレーヤー仲間のよしみで少しぐらい愛想でもいいから聴いていけばいいものを少年の演奏など知んねーよって感じで急忙とドラムセットを片付け9と3/4番線の方へ去っていった 流石ロンドンっ子は違う その後キャスターバッグを曳いた旅行者や乳母車を押す御婦人そして通行人またはその他大勢がぽつりぽつりと足を留めだした 動画は第一楽章全てを収めているから9分に及ぶ その間徐々に観客が入れ替わり立ち代わりながら増えていく ほんの少し立ち止まってすぐに歩いて行く人 聞いていたいがクライアントとのアポに後ろ髪を引かれるように立ち去るビジネスマン 破産した男 離婚を待っている女 いろんな人々が青天の霹靂のように突然始まったホロビッツ少年の演奏に聴き入っていた

 もしかしたら少年はホグワーツからやって来た魔法使いだったのかもしれない

 ワルトシュタインはずいぶん昔初めて聴いた時に途端に虜になってしまいそのころ名演と評判の高かった(ように覚えている)アシュケナージのCDを買って何度もくり返し聴いた

 第一楽章から第三楽章まですべてがいいが特に一と三は甲乙点けがたい こんな風に書くとじゃあ二はダメなんじゃないかとおっしゃるかもしれないがそんなことは断じてない 人の挙げ足を取るようなことを言うものではない そういうことを言ってるんじゃぁないある

 このCDにはあと<<テンペスト>>と<<告別>>も入っている 両方ともお薦めだ

 ワルトシュタインは楽譜も買った 買ってどうしたのか はじめのうちは楽譜を眺めていた その次はアシュケナージの演奏を聴きながら大体この辺かと音符を追いかけた 最後にシーケンサQY100に打ち込んでいろんなテンポで聴いた 楽しかった

 QY100にはほかにアンドリュー・ヨークの<<サンバースト>>も楽譜を買って打ち込んだ これもいい曲だ

 いつかピアノ協奏曲の総譜を買って打ち込んで聴いたみたい QY100では無理だけど

 最後は違う話になってしまった